ちよ文庫

詩、掌の小説

2020-09-01から1ヶ月間の記事一覧

「天使のメランコリック」

神様は言った。 「天使の身でありながら人を知るためみずから人間となり、地上で生きたこと。真に立派であった。その苦労をねぎらって、おまえに権利をひとつやろう。」 次に、神様は人ひとり映るくらいの鏡をポンとお出しになった。 「この鏡はおまえが命を…

「時計仕掛けの劣等生」

「ちょっと話したいことがあるんだけど、いいかな。」 なるべく、なんでもないふうを装った。 ほとんど間を置かずに聞きなれた声から「いいよ」と返ってきたので少しホッとする。 「やることあるから時間かかるけど、それでもよかったら待ち合わせる?」 「…

「根っこ」

あたりいっぱいに広がる草むらをかき分けた先。 ポツンと立ったおおきな木の下には、これまたちいさな1匹の野うさぎが暮らしていました。 彼は名前をクランクといって、とんでもなく寂しがり屋ですが、それでもたった1匹で日々を一生懸命に過ごしておりまし…