ちよ文庫

詩、掌の小説

2020-04-01から1ヶ月間の記事一覧

「タルトタタンの夢」.後

新しい薬の効果だろうか? その夜に見た夢はいつもと違った。 桜が街路灯に照らされている、春の夜。 そっと肌を撫でてくれる心地のいい風が吹いていた。 桜の樹の下に誰かがいる。黒髪に少し幼い体躯。 ちーちゃんだ。また夢で会えた。 彼女は地面を一生懸…

「タルトタタンの夢」.前

また、同じ夢だ。 「うーさーぎおーいしい かーのーやーまー」 彼女は「ふるさと」を口ずさみながら真っ赤な林檎をウサギの形に切っている。 「ちーちゃん。「うさぎ美味しい」じゃなくて「うさぎ追いし」なんだよ?」 「もう。そんなの、たーくんに言われな…

「雨傘」

雨は好き。だって、雨は美しい。 雨音を聞きながら本を読む時間を私は幸福だと思う。雨の日に音楽を聴くと、一層感傷的に響くから。音に溶け込めるようで普段より好き。 それに、心を洗い流してくれる。慈しむような優しさがある。だから私は雨が好き。 傘は…

「私自身のリアル」

ポエトリーリーディング「27才のリアル」(狐火)をオマージュした、これは私の詩。 「私自身のリアル」 「話してて21歳とはとても思えない。」 特に何も思わなかった。もう言われ慣れてた。 皆の中の私はやたら大きくて""強い""人間だった。 自分に誇りを持っ…