ちよ文庫

詩、掌の小説

2020-06-01から1ヶ月間の記事一覧

「羽根の抜ける頃に」後

パトカーに乗せられておよそ10分。連れてこられたのは警察署だった。 お巡りさんから降りるように言われて建物の中に入る。警察署にお呼ばれすることなんて日常には滅多にないから呑気に見学しているとついてくるようにと言われた。 連れてこられた部屋はテ…

「羽根の抜ける頃に」前

𓄿 「なんで自殺しちゃいけないのかな?」 スマホを横向きに構えソシャゲに興じながらとんでもないことを安々と聞いてくるこの男、柿之木 鶉は小学校以来の付き合いだ。 もっとも、いきなり突飛な話をしてくるから昔からサッパリ読めない。 「............お…

「砂」

朝目覚めると小鳥が鳴いているような 真白いホットミルクのぬくもりのような カーテンを開けると射す陽の光のような ふとんにくるまり微睡む昼時のような そんなささやかな幸福に私はなりたい あなたを希うことはなくていい 親しき友になれずともいい 愛され…

「テントテンデセン」

幼なじみは心配症だ。 勉強は昔からできたし、友達も多くて女の子から好意を持たれることも何度かあった。 就職の時だって第1志望に受かってて一緒に泣いたし、会社でもやっぱり人から好かれるらしい。 ただひとつ彼の下手くそなところがあるなら、持ち前の…