ちよ文庫

詩、掌の小説

2020-08-01から1ヶ月間の記事一覧

「生命を壊す」

ただそれなりでいたいな、と思いながら「それなり」ってどんな人間なのかはよくわからない。 人並みに友達に囲われながら生活して、好きな人と恋愛して、いつかは一緒に暮らして子どもをつくり平穏な家庭を持つ。 世間で言うところの「普通の人間」は俺が思…

「蜜を誘う」

「大切なのはビギナーズラックよ。誰だって人生の初心者でしょう?」 決して生半可ではない世界を華々しいビジュアルと手練手管で生き抜いてきたお袋の口癖だった。 それぞれがそれぞれの事情を抱えて闊歩する夜の街。 週末の喧騒やアルコールの匂いは幼い頃…

「夜を飛ぶ」

高校で出会ってから7年。 友人のフウタは昔から面倒見がいい。 なんせ数ヶ月で教師を辞めてしまった俺を見放すどころか、「野垂れ死にされても困る」と言って家に置いてくれたくらいだ。 初めは酒の席での話だと思って聞いていたから、トントン拍子で居候が…