ちよ文庫

詩、掌の小説

「1111」.3

地元の駅から自宅付近まで歩き、自動販売機の前で「あたたかい」の欄にあるミルクティーを選ぶ。

もう暗くなった今の時間帯では眼前に広がる河川敷にサッカー少年などいなかった。

ペットボトルで手を温めポケットに入ったセッタを取り出してお下がりのライターで火をつける。

紫煙を見つめながら今日の小休暇を振り返った。

3日前、私はハジメと別れた。

優しすぎるハジメに甘え倒して日々ダメになっていく。自分がどうしても嫌いだった。

電話口でハジメは感謝の言葉と共に私の前からいなくなった。家も連絡手段も何もかもが消えている。

残っているハジメは携帯のアルバムフォルダとプレゼントしてくれた品々、お揃いの指輪くらいのものだった。

職場にも行きつけの店にも彼の影しか残っておらず、ここ数日間でわかった事実は「ハジメが私を愛してくれていたこと」ただそれだけだった。

梅の花が咲くと同時に私の前から去っていった不器用な彼。桜が咲く頃には帰ってきてくれないだろうか。

残ったミルクティーの中にまだ吸いかけのセッタを押し込んでゴミ箱へ捨てた。

煙草の味はいつもと同じようでいてよくわからなかった。