ちよ文庫

詩、掌の小説

ぼくとマンソン .4

マンソンがどこにもいない。

ベッドの中にもリビングにも、お庭にもいない。

保育園に行ってもマンソンは尻尾の陰も見当たらなくって、アキトくんと遊んでも心に棘がチクチク刺さってる気がした。遊んでても楽しいのに楽しくなかった。

ぼくはアキトくんと遊んでいる間も心の中ではずっとマンソンを探していた。

日が暮れて空がオレンジ色になってもマンソンは現れなかった。

耐えきれなくて、帰り道に「マンソンはどこに行っちゃったの。」っておかあさんに聞いてみても変な顔して教えてくれなかった。

ぼく、マンソンに嫌われちゃったのかな。

どれだけ待ってもマンソンは帰ってこなかった。前にマンソンが描いていたまっ赤な絵は、ただの白い画用紙に戻っていて、もうよく分からなくなっちゃった。

マンソンを待っている間にぼくはたくさん怪獣の絵を描いた。ぼくの部屋にはギザギザの歯を持つ巨大な怪獣やおうちの屋根くらいもある翼の生えた怪獣の絵でいっぱいになった。

もしかしたら、いつかまた隣に絵を描いてくれるかもしれないから。その時までぼくの目は芸術家であることにした。